印刷工程や加工工程で必要となる「トンボ」。
完成品には残っていないので、実際に印刷した経験がないとなじみの薄い言葉ですが、印刷の仕上げには必要不可欠な要素のひとつとして知られています。
ここではトンボの種類やそれぞれの役割について説明します。
トンボは印刷工程や加工工程における目印の事
トンボとは、印刷物の作成時に完成サイズに仕上げるための目印を指します。
どの位置につける場合でも十字のマークがあり、それがトンボの形に似ている事からその名が付けられました。
主に多色刷りの見当合わせや、仕上がりサイズに断裁するための位置、さらには折りや綴じなどの加工を施す位置確認のために用いられます。
印刷や加工はトンボを基準にして行われるため、印刷データの中でも重要な役割を担っているのです。
トンボの種類は用途や目的によって様々存在する
トンボには複数の種類があり、それぞれ用途や目的が異なります。
正しく使用しないと仕上がりに影響を及ぼす可能性がありますので、それぞれの役割をきちんと把握しておきましょう。
「日本式トンボ」と「西洋式トンボ」の違い
トンボは世界共通の目印と思われがちですが、実は海外と日本では形式が異なります。
まずは日本式トンボと西洋式トンボの違いについてチェックしましょう。
日本国内で推奨されているのは二本線の「日本式トンボ」
四隅につけられるトンボが二本線になっているタイプです。二本の線がちょうど交差している部分を頂点として、内側の線が仕上がり位置となります。
国内では日本式トンボを使用するのが推奨されており、印刷会社によっては日本式トンボでないと入稿を受け付けてくれないところもあるので注意が必要です。
海外で印刷データをやり取りする際は一本線の「西洋式トンボ」
一本線のみで表されるトンボの事で、海外では「トリムマーク」と呼ばれています。
一本線という性質上、トンボが仕上がり位置に接してしまうため、断裁ズレした時にデザインに入り込んでしまうおそれがあります。
そのため、日本国内で使われる事はほとんどありませんが、海外と印刷データをやり取りする場合は西洋式トンボが用いられるケースもあります。
日本式トンボは内・外・センター・折りの4種類に分類される
国内では日本式トンボを使用するのが一般的と説明しましたが、目的や用途によってさらに
*コーナートンボ(内トンボ)
*コーナートンボ(外トンボ)
*センタートンボ
*折りトンボ
の4種類に分類されます。
1.コーナートンボ(内トンボ)
四隅につけられるトンボは内側と外側で役割が異なります。
内側の「内トンボ」は印刷の仕上がりサイズを表すもので、二重線が交差した部分にデータの角を合わせて調整します。
断裁や仕上がりサイズを決める役割を担っている事から、別名「裁ちトンボ」「仕上がりトンボ」とも呼ばれています。
2.コーナートンボ(外トンボ)
印刷された用紙は複数枚に重ねられ、トンボを基準に断裁されます。
ただ、印刷位置のズレや用紙の伸縮、重ねた時の微妙なズレ、刃先の流れなど、さまざまな要因によって断裁には数mm程度のズレが生じます。これを「断裁ズレ」と言います。
断裁ズレは必ず起こるものなので、フチなし印刷の場合、多少ずれても大丈夫なようにあらかじめ仕上がり位置より一回り大きく絵柄を作成する「塗り足し」を行います。
この塗り足し領域を示すのがコーナートンボの外側で、外トンボの長さ=塗り足し幅(ドブ)となります。
断裁ズレが1~2mm程度であることから、ドブは3mmほどに設定されるのが一般的です。
3.センタートンボ
印刷データの天地・左右の中央に置かれるトンボです。
主に多色刷りの見当合わせに使われますが、両面印刷を行う場合は表裏の位置合わせの目印にもなります。
また、カタログや冊子といった印刷物の場合は、ページ番号(ノンブル)を入れる位置の目安として用いられます。
こうした役割から、別名「見当トンボ」「レジスターマーク」とも呼ばれています。
4.折りトンボ
折り加工や筋入れ加工を入れる位置を示すトンボです。
3つ折りリーフレットを作成する場合などに多用されますが、印刷会社によっては折りサイズを指定すれば折りトンボは不要というところもあります。
トンボは印刷物の仕上がりを左右する重要な目印
トンボは印刷・加工工程において、多色刷りの見当合わせや断裁・折り加工の位置確認などさまざまなシーンで活用されます。
いわば印刷物をイメージ通りに仕上げるための基準であり、印刷・加工工程になくてはならない存在です。
最近の画像編集ソフトにはトンボを自動設定してくれる機能が付いている物もありますが、そういった機能がついていない場合や微調整したい場合は自分で設定しなければなりません。
そのため、トンボの基礎知識や種類の違いをしっかりおさえておくことをおすすめします。